2007年夏山合宿 剱岳
今回の夏山合宿は僕にとっては初めての本格的な登山ということで、不安だらけだった。
しかも登るのはあの悪名(?)高い剱岳だ。
高取山のおじさんたちには散々脅されるわ、3日前に人が死ぬわで、合宿前の僕にとっての剱岳のイメージは、とにかく危ないということしかなかった。
そんなわけで、不安を抱きつつ出発したが、室堂につくとあまりに日常離れしたきれいな景色にそんな思いは吹き飛んだ。夏に雪があるなんて・・・
室堂のお花畑はとてもきれいで、色々な高山植物が見られた。空は快晴で、絶好の登山日和だった。でも所々イオウ臭かった。
雷鳥坂は急に見えたけど、意外としんどくなかった。
高山病気味の軽い頭痛に襲われたが、登っていると楽になった。
山岳男はやたらと元気で一番に登っていた。
このとき、“逆高山病”という言葉が生まれた。
アニキが雷鳥を見つけていてとてもうらやましかった。
KENさんはケータイを落として「ショックで帰りたくなった」と語っていた。
別山乗り越しでは、トイレが有料だということにちょっとしたカルチャーショックをうけた。
剱御前では、みんなテンションが高くて色々なポーズを決めていた。
中でもミッチェルさんのブリッジもどき(?)にはみんな大爆笑だった。
そして、剱岳が間近に見えた。岩だらけでとても険しそうだった。
剣沢キャンプ場につくとなんだかホッとした。
座った岩の上に蝶ヶ岳のピンバッヂがあった。
蝶ヶ岳といえば3年生が行ったところだ。
そういえばその時59回生が尾瀬のピンバッヂを拾ったらしい。
そして去年の夏山は尾瀬だった。
夏山合宿はピンバッヂでつながっているのかもしれない。
幕営が終わって時間が余ったので、余力がある人は前剱まで行くことになった。
竹と山岳男とアニキとN先生の4人で行った。
登山道は岩だらけで歩きにくかったのに、N先生はすいすい登っていてさすがだなぁと思った。
前剱に着くと、目の前には剱がそびえ立っていた。
それでも、だいぶ登ってきたようで、キャンプ場のテントが粒ぐらいの大きさになっていた。
辺りも少し薄暗くなってきたので前剱を下りた。
途中、初めて雷鳥を見た。鳥好きの僕にとって、雷鳥は憧れの鳥だった。
すぐ隠れてしまったが、かわいい雷鳥親子を見ることができたので、前剱に登ってよかったと思った。
夕食の心配をしながらキャンプ場に帰ったが、案の定夕食はできてなかった。
帰ったらすぐに食べたかったけど、やっぱ夕食はみんなでつくらなあかんなぁと思った。
そして完成した焼きビーフンはとてもおいしかった。
その夜は疲れていたのでよく寝れた。
2日目、朝はテントの中で餅ラーメンを食べた。
先輩達は棒(某?)ラーメンはまずいと言っていたが、僕はうまいと思った。
そして剱岳に出発!前剱までは昨日行ったのでまだ楽だった。
しかし、そのあとに待っていたのは難所「カニのタテバイ」だ。
一言で言うと崖。登っている途中、アニキが「うわっ!!下ヤバイで!」と言ったのでつい下を見てしまった。
高い・・・高すぎる・・・。
そして怖い・・・。
体がすくんだが何とか登りきった。そのときはとてもホッとした。
山頂に着いても意外に達成感と喜びを感じられなかった。
まだ下りるときの不安があるからなのかもしれない。
それでも、山頂からの大パノラマはとてもきれいだった。
祠に彫ってある雷鳥がかわいかった。
山岳男は崖っぷちでポーズをきめていてかっこよかった。
そのまま“紐なしバンジー!!”とはいかなかった。
そして最後にして最大の難関、「カニのヨコバイ」にたどりついた。
渋滞ができていたので暇だった。
山岳男は「関西弁禁止ゲーム」をしていたが、やっぱり無理だった。
このとき、他の登山者がザイルをつけているN先生を見てこう言った。
「いやぁ、顧問の先生が一人で大変ですね〜」
あっ・・・K先生!!・・・生徒と思われてますよ・・・。
そのようなことがあって、ついに自分の番がまわってきた。
だが、ヨコバイは圧倒的な強さだった。
タテバイはまだ足を掛けるところがあったが、ヨコバイにはそんなものはなかった。
断崖絶壁で足をかけるくぼみを探している時間はとても長く、頭の中は恐怖でいっぱいだった。
あんなに「死」というのを意識したのは初めてだった。
そしてなんとかヨコバイを突破した。
下りた所には茶色い物体があった。
誰かがヨコバイから下りて気が緩んでもよおしたんだろうなぁと思った。
その後のハシゴや岩場はヨコバイほどではなかったので、あまり怖くはなかった。
前剱からは昨日の3人で下りていった。
昨日1回下りていたので楽だった。
僕は(たぶん)雷鳥の羽を拾い、有頂天になっていたが、途中でかなり大きめの石を落としてしまった。
石(岩?)は雪渓の雪を弾き飛ばしながらハイマツ林に突っ込んでいった。
下は道が無くてよかったものの、人に当たったら大変なことになると思った。
浮石には気を付けようと反省した。
剣沢キャンプ場に着いて荷物を片付けていると、兵庫高校のOBに出会った。
まるで大堀鏡みたいだと思った。そういえば生物部の合宿でもOGに会った。
さすがは兵庫高校だ。
その後、チーカマがばてたらしく、先輩達が助けに行った。
僕はこの時先輩がとても頼もしく見えた。
そして全員がキャンプ場に到着し、今日のところは無事だったと安堵した。
この日の夕食は散らし寿司とソーメンだった。
おいしかったのでたくさん食べていると、N先生に「底なしや」と言われた。
KENさんは高山病の頭痛で僕とテントをかわった。
KENさんには悪いけど、僕は「ラッキー☆」と思っていた。その夜はとても楽しかった。
洋式派のミッチェルさんが和式にチャレンジし(もちろんトイレの話)、アニキがぼっとん便所について熱く語った。
アニキにはボットン・マスターの称号が与えられた。
その後UNOやトランプを少しした。
シュラフに入って寝ようとしてると、となりの山岳男が急に「ビクッ!」とはねた。
そして彼は言った、「ヨコバイから落ちる夢見た」と。その後ミッチェルさんも「ビクッ!」となったが、なぜかは分からなかった。
3日目、朝アニキがテントの中でヒゲを剃っていた。
台風が接近していたので、予定していた立山には登らず、室堂まで帰ることになった。
今日のルートは1日目に通ったので楽だった。
雷鳥坂は僕と山岳男とミッチェルさんの3人で駆け下りた。3人とも滑りまくった。
雷鳥沢に着くと、コースタイムより20分も早かった。
雷鳥沢でM高校と話し込んでいる山岳男を放って室堂まで帰った。
室堂ではみんなでお土産を買った。
その後みんなでミクリガ池温泉に入りに行った。
「日本一高所の温泉」はとても気持ちよかった。
みんな日焼けで“赤色人種”になっていた。温泉の帰りにまた雷鳥の親子がいた。
人がたくさんいるのに全然怖がってないみたいだった。
お花畑の雷鳥もかわいいけど、剱岳のときのように断崖絶壁にいるほうが雷鳥らしいと思った。
そして、何の苦労もしていない観光客が雷鳥を見られるのは何だかズルイと思った。
その後、バスで室堂から出発した。来たときは不安だらけだったけど、帰るときになると名残惜しかった。
僕はこの合宿で普段見られないきれいな景色や雷鳥を見られて、自然の楽しさを感じたし、剱岳では自然の厳しさを感じた。
山岳部のみんなとも楽しい時間を過ごせてよかった。
この合宿では本当にたくさんのことを経験できたので、その経験をこれからの登山に生かしたい。