長い長い県総体のお話
〜前置き〜
高校総体で最もマイナーかつ謎に包まれている競技。それが登山だ。
登山大会は体力、歩行技術、装備、計画書、設営(テントを張る)、炊事、記録、知識(ペーパーテスト)、気象(天気図を書く)、読図(地図を読む)、マナーの10項目が審査される面倒くさい競技なのだ。
今年の県総体はメンバー全員初参戦だったので不安があったが、2位までがインターハイに行けるという大きなチャンスだった。
このメンバーならいける!という自信もあった。
だがその自信を打ち砕く事件が起こった。例の新型インフルエンザだ。
これで2週間も部活ができず、準備もギリギリだった。N先生もあきらめているようだった。
そんな中でこの県総体は始まった。
〜本編〜
“えぇ〜!?”
この竹の心の声から全ては始まっていたのかもしれない。
西暦2009年6月5日、山岳部県総体の日である。
竹が長田駅で神鉄を降りようとザックに腕を通した瞬間、彼の腕時計は崩壊した。
「県総体の日に壊れるとは…不吉な…」しかも小雨が降っていた。
1時間目の授業を受けた後、Yamanobolers出陣!
兵庫高校山岳部は、大会前は必ず1時間目だけを受ける伝統的なものがある。
言っちゃあ悪いが、正直いらない伝統である。
生物室ではウーパールーパーが逆立ちをしていた。
そして長田警察署前へ。長田の女子が3人もいることに我々は驚きを隠せなかった。
兵庫唯一の女子、Fさんは今回諸事情により参加できなかった。
それはともかく、Ysはバスに乗り込み、大会会場へ出発した。
チーカマとTはバス内でも知識の勉強をしていた。
御影はというと、男女入り混じって楽しそうにポケモンの話をしていた。
女子がいるって言うのは本当にいいことだとつくづく感じた。
14:15分頃、バスは旧熊次小学校に到着!結構時間ギリギリだった。
開会式が終わり、天気図と知識審査が始まった。
天気図は竹とH、知識はチーカマとTが挑んだ。
どちらもあまり大きなミスはなかったようだ。
その後はオープン隊で余ったワカメが入れられたカレーを食べて寝た。
Hだけが爆睡していた。
大会の最もメインと言える2日目、朝のラーメンは“しゃぶもち”なるものを煮込んでしまったため、どろどろしたラーメンになってしまった。
ザックの計量では、67キロもあったので、できるだけ軽くした。
そしていよいよ登山開始。
大久保までは隊行動で行き、そこからタイムレースだ。
タイムレースは一言で言えば競争。1着のタイムから1分ごとに0.5点引かれるというダントツにしんどい審査だ。
竹は長田高校に聞いた。
「長田は走るんですか?」
長田「走りませんよ、まぁ他の学校が走るんなら走るけど…」
兵庫も走る気は無かった。
緊張と不安の高まる中、ついにシンチャン(審査員のことを山岳部ではこう呼ぶ)が秒読み開始!
「5、4、3、2、1、スタート!!!」
「ダダッ!?」最初に飛び出したのは三田だ。
しかも走っている。
“えぇ!?走んの!?”他の学校も負けじと走り出す。
「くそ〜負けてられるか!走るぞ!」と、兵庫もダッシュ!
ちょうど下見でN先生が道を間違えた所らへんで走りは終わった。
その時点ではトップが三田、次に長田、兵庫と続いていた。ここからは地獄の登りだ。だが既にHが苦しそうだった。
地獄の登りの途中で長田が三田を抜いた。
兵庫も抜きたいところだったが、Hが遅れだした。
「Hー!!」Hは過呼吸になっていて、きつそうだった。
だがTが励まし続けたおかげでなんとか持ち直した。
Tは、Hのザックを押していたが、Tはほとんどもたれて休んでいただけらしい。
しかも励ましもほとんど自分のためだったとか・・・(後日談)
稜線に近づいた頃、三田が遅れだした。
“今がチャーンス!!”
「追い抜きます!!」こうして兵庫は三田を抜いた。
それから少し登ると稜線に出た。
これでもう一番きつい登りは登りきった!
Hの妙なワガママで5秒だけ休んでから再スタート。
ここからはアップダウンが小さいし、下りもかなり多い。
「後は長田に追いつくだけや!行くぞ!!」
みんなでHを励ましながら進んだ。
長田が少しずつ近くなってゆく。
そして最後の高丸山の登り。
竹はこのときHがじれったかったので、「H! ザック貸せ! 持ったるわ」と、Hのザックも背負い、階段を登り始めた。
彼は「気力でいける!」と思っていたが、案の定すぐギブアップした。
最後はみんな必死に登った。
そしてついに高丸山山頂にゴール!!
結局長田には追いつけなかったが、12秒差だったので、満点を取れた♪
タイムレースゴール後、20分の強制休憩。
みんな感動に浸っていたが、竹とHはタイムレース途中の読図ポイントについて議論していた。
結局H案が採用されたが・・・
強制休憩終了後、兵庫はトップで出発した。
近くに他のパーティーがいないと楽だった。
そして今回の最高峰、鉢伏山山頂に着いた。
かなりテンションが高かったのでシンチャンに写真を撮ってもらった。
山頂からはほとんど下りだったので悠々と下っていった。
その途中、シンチャンが隠れていた。
一瞬焦ったが転んだりはしなかった。
だがTの口は思いっきり滑ってしまった。
その後の行程は特に問題もなく、兵庫は別宮大カツラ駐車場にトップでゴールした!
しかし、ゴール後計量のはずなのに計量機がまだ来ておらず、待たされるはめになった。
計量機が到着して計量と装備審査が行われた。これも問題なかった。
その後みんなでぺちゃんこになったパンを食べ、他のパーティーと一緒に熊次小学校へ戻った。
予定よりだいぶ早かったのでかなり待たされた。
みんな面白いぐらい同じ格好で座り込んでいた。
次は設営審査だ。近畿大会ではボロボロだったので心配だった。
「ピ〜・・・」
弱々しい笛の音で設営審査は始まった。
狭い校庭に次々とテントが張られていく。
だかここはキャンプ場ではない、校庭だ。
ペグが刺さりにくいのだ。
うまく刺さったと思っても、地面が崩壊してしまう。
それに時間がとられたが、なんとか10分以内にテントを張り終えた。
この戦いでペグが5本ぐらい死んでいった。
「ピ〜・・・」
またひ弱な音で終了が告げられるとシンチャンサッチャンたちがテントを見て回り始めた。
兵庫のテントもよってたかってジロジロ見られる。
「そんなにジロジロ見るな〜・・・」と願うだけだった。
設営が終わると次は炊事審査だ。
炊事は1時間以内に調理を終えて食べ始めなければならない。
今回のメニューは焼きビーフンとご飯とワカメスープだ。
焼きビーフンは手早く、美味しく作れる。
炊事審査にはうってつけのメニューだ。
調理は順調に進み、45分ぐらいで出来上がった。
シンチャンも特に文句を言わなかった。焼きビーフンは水気もなく、美味しく出来ていた。
これで審査はほぼ終わった。
あとはマナー点を減点されないように気を付けるだけだ。
ここからは交歓会ということで恒例の計画書配りをしようとしたが、予備の計画書を持ってきている学校は少なく、結局5校分ぐらいしか集められなかった。
その後暇になったのでオープン隊のテントにいってみた。
オープン隊では“ワケギ”事件があったらしい。
Mは1年の世話で疲れているようだったが、女子隊のテントの近くだったのでテンションは高かった。
それから、全員でネタ満載の集合写真を撮った。
他の学校に笑われていたが、そんなことを気にしていてはまともな写真しか撮れない。
まあ、まともな写真を撮るのが普通だが・・・
その後はオープン隊のテント内へ。
そしてその臭いテントでトランプ大会が行われた。
この夜は月がきれいだった。
これまでの審査では特にミスをしていない。
“これは上位狙えるかも・・・”そう思うとドキドキしてなかなか眠れなかった。
いよいよ最終日、朝はあったかい雑炊を食べた。
今日は隊行動で逆水まで登る。要するに審査の時間稼ぎだ。
登山行動はホントに楽で、昨日とは比べ物にならなかった。
熊次小学校に帰ってくると、ついに結果発表だ。
“ドキドキ・・・”
みんなカービィのメタナイト戦の直前ぐらい緊張していた。
“1位は長田やろなぁ・・・2位になれれば・・・”
審査委員長が結果発表を始めた。
「6位篠山産業、5位姫路工業、4位長田・・・」
“え!?長田が4位!?”
「・・・3位柏原、2位三田」
“まさか・・・”
「1位・・・兵庫」
“よっしゃー!!!!”
なんと優勝だった。
声には出せなかったがみんな心の中でものすごく喜んだ。
そして優勝盾と個人の表彰状をもらった。盾はいろんな意味で重かった。
閉会式が終わると、テンションMAXのYsはみんなで写真を撮った。今度は真面目に。
優勝と同時にインターハイへの切符を手にしたのでインハイの資料も貰った。
バスが来ていたので、慌ただしく熊次小学校を出発した。
バス内では先輩へ報告したり、インハイの資料を読んだりしていた。
Tは覚える知識の多さにげんなりしていた。
そんなこんなしていると、あっという間に長田に到着した。
これで終わり・・・ではなく、一番だるい“片付け”が待ち受けていた。
学校に帰還し、テントを干していると、なんとアニキがやって来た。
「アニキ〜!」
アニキ「おぅ、おめでとう。アイス持ってきたで〜」
アイスは例のガリガリ君だった。
そして楽しい報告会が始まったとさ。おわり。
〜感想〜
まず、優勝できて本当に嬉しかった。
インフルエンザ騒動があったときはもうダメかも・・・
と思ったりしたが、最後まであきらめずに優勝を狙って頑張れたのが良かったと思う。
登山大会は努力とチームワークさえあればその分の成績が残せるものだ。
特別な才能は要らない。
兵庫はチームワークがどの学校よりも良かったと思う。
タイムレースで長田に勝てなかったのは長田の方が努力していたからだ。
天気図と知識は休校中に勉強できたのが逆に良かったと思う。
今回の成績は90点満点で87.3点だった。
ほぼ満点に近いけど、細かいミスを直せば満点を狙えると思う。
そして来年もぜひ優勝してほしい。
今回優勝できたのは山岳部全員が努力し、団結して優勝を狙っていったからからだと思う。
みんな本当によく頑張った。お疲れ様!
そして先生方や先輩方、ご指導ありがとうごさいました!