8月28日6時、日本三霊山である白山に登るために鈴蘭台駅に僕たちは集合した。部長のYは4分ほど遅刻したが特に問題はなかった。N先生とI先生も加えて僕たちは車で移動した。車の中で取り留めのない話をしながら10時30分、市ノ瀬に到着した。駐車場は夏休みの最後だからかほぼ満車だった。不思議な綿毛が舞っていてかなり幻想的だった。その後、バスに乗って別当出合まで行った。別当出合は人もアサギマダラという蝶も多かった。天気も夏山合宿のときと打って変わって晴れだった。
別当出合を11時に出発し、すべてが順調に始まったと思われた矢先、唐突に僕はサブザックを忘れてしまったことに気がついた。他のメンバーはメインザックを使えばいいと言ってくれて、Tは大は小を兼ねると言った。別当出合から2キロ、僕たちは最初の休憩を取った。そして少し元気が出たとき、僕は何故かN先生に挨拶をした。別に狙ったわけではないがあえて言うならぼんやりしていたのだろう。
2回目の休憩ののちに曇ってきたことと滑り落ちかけたこと以外は特に問題なく13時53分、南竜小屋に到着した。付近にはチングルマなどの高山植物が生えていた。
このまま幕営かと思った矢先キャンプ場に行く道で迷い、まるで落とし穴のような泥にはまった。その後、道を間違えていたことに気が付き、戻って今度こそキャンプ場に到着してテントを張ったのち調理を始めた。当初の予定では1日目の夕食はカレーだったのだが2日目の青椒肉絲(チンジャオロース,ピーマンと肉の炒め物)のピーマンが傷んでしまうため、急きょ青椒肉絲に変更したが、青椒肉絲は好評でよかった。調味料を忘れるなと言っておきながら僕が塩を忘れたこと以外は。その後真ん中がガラスの鍋のふたを窓に見立ててスペースシャトルとか言い始める者もいたり、不安定な木の棒でシーソー遊びをする者もいたりした(僕も含めて)。そして積乱雲の接近のせいか霧が立ち込めるなか、日が暮れた。
夜、都会では到底見ることはできないような星空の下、テントの中で僕たちはトランプ遊びや宿題を少しして、Yや僕の怖い話で締めくくった。就寝時刻は8時だった。
2日目(8月29日)4時起床。まだ星が出ているなか、調理を始めた。とはいえ、当初の予定では2日目はラーメンで3日目はうどんだったが、うどんの油揚げが傷んでしまうので急きょ変更になった。どうも食糧計画がずさんだったようだ(担当は僕だった)。次回から気をつけたい。
5時35分、南竜ヶ馬場キャンプ場を出発した。この日こそ今回の登山のメインである御前峰に行くのである。荷物はテントにデポして、サブザック行動をするのだが、僕一人だけスカスカのメインザックで行くことになった。自業自得とはまさにこのことだ。
エコーラインのコースをたどって、ダイモンジソウや日の出を見ながら、僕たちは進んだ。室堂で休憩を取ったのち、御前峰に登った。高山だったのでハイマツがやはり生えていた。
そして7時40分、ついに御前峰(標高2702m)に到着した。写真で見たものとは比べ物にならないほどの景色だった。溶け残った雪と、下のほうに生えているハイマツがグラデーションのようになっていた。また中央の青緑色の翠ヶ池も奇麗だった。さらに遠くには雲が邪魔だったが、日本アルプスも見えた。
その後、その周りの池の近くに行ったり、雪渓に触ったりした。「らくらく新道」というどうしたって険しい道を見つけたり、ハクサンシャクナゲを見つけたりしながら室堂に戻った。この時、Yの体やザックに蝶が停まった。そしてアルプス展望台まで行ったのだが霧が出たために全くと言っていいほど何も見えなかった。そしてアニメ映画の話をしながら降りて行った。
サブザック行動だったため楽だったが、今回の登山で最も思い出に残った山行が終わった。11時14分南竜ヶ馬場キャンプ場に到着した。
しかし戻ってから夕食までの時間が結構開いていたので、トランプ大会が始まった。と同時に僕と僕の終わらない宿題との格闘が始まった。あまりにも暇だったのでひらがなの「る」に見える木目を撮る奴も現れた(自分)。
15時10分、調理が始まった。ポテトサラダのきゅうりの塩は南竜ヶ馬場の小屋で借りることができたので助かった。カレーによって心なしかみんなも元気が出たような気がする。
そしてその日の夜、やはり素晴らしい星空が広がっていた。あれはオリオン座かもしれないとか思いながら、トイレに行くついでに星空の写真を長時間露光を使って撮ってみた。そして撮れた。よくわからない光の点が5個ほど。どうもカメラの感度は人の目には遠く及ばないようだ。この日の就寝時刻は7時だった。
3日目(8月30日)3時起床。朝早かったためかみんないらいらしていた。そして調理、朝食。ランタンがないと暗くて何も見えない。最後に1日目からずっと立てっぱなしにしていたテントを撤収した。ザックの整理に時間がかかった上に、出発になってからトイレに行きたいと言い始める奴(自分)がいたために出発は遅れに遅れて5時7分になってしまった。
三日間御世話になった南竜ヶ馬場に別れを告げ、いきなり下ってから登る油岐の頭を進み、天池までやってきた。朝露がおりてすごく湿っている草をなるべく避けてザックダウン。逆光で天池の水面は鏡のように向こう側の淵のシルエットを映していた。そんな景色を眺めているとき、ほぼ真上をヘリコプターが通過した。間近で見ると迫力がある。
そして険しい大屏風を越え、「市ノ瀬まで9.6km」と書かれた標識で荷物を置き、別山へ行った。7時20分に到着した。別山からの景色は白山からの景色ともまた違って素晴らしかった。緑の山々を眺めているとき再びヘリが現れた。戻って、ササ、ダケカンバなどが生える千振尾根の道を進みながら、見えていくら下ってもなかなか辿りつけないチブリ小屋、とてもおいしい天然水のとれる水場へとどんどん下っていき、ついに市ノ瀬に11時40分に到着した。ここでザックを車に乗せて、市ノ瀬を後にした。そして白峰温泉に寄って登山の疲れを癒した後、僕たちは神戸へと帰った。
今回の登山は僕にとって二回目の合宿だった。夏山合宿ほど過酷ではなかったが、大変ではなかったと言えば嘘になる。しかし、だからこそ得られたものはとても大きかった。登山は山や谷だけでなく疲労や苦労を乗り越えるからこそ達成感があるのだと思う。
いろいろ足を引っ張ってしまったけど、支えてくれた部員や、引率の先生方、本当にありがとうございました。