山岳部誌2007夏山合宿
独自の感想の混じる夏山合宿報告
兵庫県立兵庫高校 山岳部
行き先:富山県北アルプス
日程:7月31日(火)〜8月3日(金)
人数:1年男子2人、2年男子4人、顧問2人、合計8人
予算:1人29000円
ザック重量:20kg
前の晩から夜行バスで移動。6;50頃、室堂ターミナル(標高2400m)に到着。アルプスとは思えない程の快晴に、気分は高まるばかりであった。
建物を出たところで各自朝食。気温は高原らしくすがすがしい。準備体操をし、7;10出発。
8:20、雷鳥沢キャンプ場で一旦休憩。部員6人中、4人に軽い高山病の症状が見られたが、やたらと元気な部員もいた。これが「逆高山病」というものなのだろうか笑。
8:35、ここから一気に500mの標高差を登る。懸命に登る者、元気よく登る者、結構差が見られた。ふと後ろを見ると今まで登ってきたクリアな室堂周辺の風景が広がっていて、存分に満喫しながらの気持ち良い道中だった。また、運良く雷鳥を目撃した部員もいた。
10:00、剣御前小屋に着きメインザックを置き、空身で剣御前(2777m)までピストン。一面山の峰峰が連なり、アルプスに来た感覚がしてきた。谷間にはそこそこ大きな雪渓がみえ涼しげだった。30分ほど進み剣御前に着き少し休憩。剣岳の山頂の剣のような鋭さ、ずっしりとした姿を見たただただ驚いた。期待と不安が一層深まった。
11:55、剣御前小屋に戻り、各自昼食。メインザックを担ぎ直し、上から見ていた谷間を下る。途中、足場が石で滑りやすく苦労した。また雪渓もわたるときもかなり滑り、膝に蚊なりの負担がかかった。そうこうして幕営地剣沢キャンプ場(2530m)に12:25到着。
テントを立て、余力のある3人と顧問で前剣(2813m)へ。往復三時間ほどの道のりだったが、今までに経験したことのない登山に絶句した。
まず、「道」じゃない。言ってみれば「崖」。普段の立ち上がって歩く登山ではなく、這い上がって進むような行程。そして標高差。下を見れば足がすくむほどの高度感を感じた。すごく精神的に疲れた。あまりの緊張感に途中の記憶があまりない。なんとか15:15、前剣にはたどり着いたが、そこから見た目の前にずっしりとそびえ立つ剣岳には言葉を失った。
そして意を決し下りへ。実は登りの方が楽で、下りは恐ろしく怖い。顧問の先生は危険だからと言って先頭に立ったが速すぎてついて行けず、結局自分たちが先導することに。明日この調子で大丈夫なのかと思いながらも、緊張感を持って下った。キャンプ場に着いたときには精神的にくたくただった。
その後夕食を作り、18:00前に夕食。この日のメニューは、前に作って好評だった焼きビーフン。味付けも不要で簡単にできる割に美味しい代物。楽しい晩餐だった。
夜。やはり高山、そして谷間であることもあって、結構寒かった。だが空気が透き通っていて、外から見る夕日はきれいだった。20:30までUNOをし、さすがに疲れていたのか30分ほどして就寝。明日待ち受ける、さらなる恐怖を知るよしもなく眠りについた。
翌朝3:30起床。なかなか寒い朝を迎えた。朝食の餅入りラーメンを食べ、少し気分は楽であったがやはり怖かった。昨日と同様風が強く、肌寒く感じた。しかしその風のお陰か、雲が速いスピードで流れ、景色は上々だった。
休憩を済まし進み始めると、寒さはどこかへ吹き飛んだ。まさに崖の連続。有るのは鎖のみ。下は数百メートルはあろうかという崖を登ったり、横に伝ったり、下りたり、また谷底が見えない細い谷を橋でわたり・・・、と、昨日以上の想像を絶する難所の連続。足がすくみまくったが立ち止まることはできないし、もちろん引き返すことなんてとうていできやしない。ただ立ち向かうしかなかった。時間を忘れ、緊張の連続だった。だが、これはほんの序奏に過ぎなかった。
8:13、平蔵コル(2850m)に到着。ここから登りの難所「かにのタテバイ」に突入。ここは言葉では言い表せない。100mほどの高低差を鎖だけで登る。下は斜面が続き、万が一落ちたらどこまで落ち転げるかわからないと言うところ。もちろん、落ちれば即死。毎年登山者の命を奪う恐怖の壁だ。下を見れば、気絶しそうなくらいの高度感だった。また途中で渋滞して止まり、怖くて早く行かないものかとうなっていた。時がないような時間を過ごした。
8:50、何とか最高峰・剣岳(2999m)に登頂。今までの登山経験で必ず感じた、登頂の喜びが恐怖で感じることができなかった。自分が生きていることが奇跡のように感じた。景色は360度絶景で、富山県はもちろん、能登半島まで見えた。またいつものように記念撮影をして、断崖絶壁を目と鼻の先に写真撮影もした。
9:15頃、恐怖の下山が始まった。生きて帰れる自身は正直なところ無かった。いきなり下りの難関「カニノタテバイ」に。部員6人中、3人はザイルをつけたが、昨日余力のあった3人衆はつけなかった。ザイル付けに時間がかかり、たちまち渋滞に。順番が近づくにつれて生きている気がしなくなった。岸壁を下りそのまま横に這うように進むところで、下は数百メートル地面がない。横に這うところは足場が無く恐怖感が増す。最初の一歩はなかなか踏み出せなかった。先に通過した部員に足場を確認してもらいながら、最後は死ぬ覚悟で足を下に降ろした。頭は真っ白だった。手には冷や汗。その日や汗が鎖を持っている手を滑らせ、怖いどころではなかった。横ばいを通過したときも生きた気がしなかった。通り越した後、安堵感が自分の心を埋め尽くした。
しかし安堵したのもつかの間、その次に待ち構えるのは、ほぼ直角にそびえ立つはしご。前の部員がなかなか足をつけられず、自分もできるかどうか不安になった。自分の番に来たときは、やはり最初の一歩が大変だった。だがもう頭の中は真っ白だったので、以外に何なりと通過した。
時間差はあったが、無事全員キャンプ場へ。途中また雷鳥にあった部員もいた。この後、テントをたたみ次のキャンプ場へ行く予定だったが、体力的にも時間的にもこれからの登山行動は困難と考え、予定を変更し連泊することに。
UNOをした後、16:00から天気図作成。作成後、数人の登山者が僕らのもとへ来た。台風五号が接近していたからだ。かなり台風は接近しており、明日はかえることができるかどうかと思った。この天気図作成は蚊なり重要なものとなり、天気図の大切さを再確認した。
夕飯はちらし寿司とそうめん。ろくに昼食も食べていなかったし、ちらし寿司は酸味があり素麺はのどごしが良く食べやすかったので、けっこぷなりょうを美味しく食べることができた。
昨日と同じように大富豪やUNOをし、20:30頃就寝。衝撃的な一日だった。
翌朝3:30起床。雑炊を食べ、テントを撤収した後、剣岳を背に5:40には出発。先々日来た道を引き返す。6:00過ぎには剣御前小屋まで登り、そこから剣岳の姿には別れを告げ、かなりのスピードで下り、7:20に雷鳥沢キャンプ場へ。膝を除いて蚊なり余裕で、自分1人だったらもっと早くついていただろうと思うくらい快調であった。
途中、御影高校の山岳部と会い、無事に全員室堂ターミナルに到着。登山行動は終わった。
メインザックをターミナルに置き、お土産を買った後、日本一標高が高いところにある「みくりが池温泉」に日帰り入浴に行った。登山行動中はずっと半袖だったので、腕がかなり日焼けし痛く、胸までしか入れなかった。
風呂から上がりその帰り、またまた運良く雷鳥にあった。しかも今度は親子を間近で。そこまで人も集まっておらず、写真もたくさん撮れた。かなりラッキーだった。
その後バスターミナルに戻り、待ち時間はばば抜きをして時間をつぶして、12:30、行きと同じ「立山アルペンライナー」にのり、室堂に別れを告げた。
今回の合宿は、今までとはひと味もふた味も違っていた。登山の厳しさや、天気図の大切さ、そして仲間と共に助け合い感動を味わう喜びが、再認識・再確認できた3泊4日だった。