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新・大堀鏡その9




スタッドレスタイヤ

六甲縦走後半の下見の日、摩耶山の車を見てふと思った。スタッドレスのスタッドってなんだろう?と。しばらくがっきーと悩んだ末、スタッド=滑り止め的なになった。溝が深くなっていて、タイヤの圧力で氷を溶かし、水を捉えて滑りにくくするというものだ。

顧問のH先生(英語)に聞くと、答えは「鋲」だった。昔の車(先生が子供の頃)のタイヤにはどの自動車にもスパイクが標準装備で、悪路を進むのには便利だったようだ。それが昭和の終わりに近づくにつれて、地方の町にまでアスファルトの道路が整備されてくると、どうもスパイクが道路を削って痛めるらしい。先生の体験によると、アスファルトに轍ができていたそうだ。
そこで登場したのが「スタッドレスタイヤ」。当時は滑らかな表面を持つタイヤが、そのまま「凍結道用タイヤ」として今も続いている。

そこで思った。スタッド(鋲)レス(無し)タイヤってことは、今の車全部に言えるよな。わざわざ特定のタイヤを指して言うことじゃないのではないか、と。つまり、昔使われていた言葉がそのまま形骸化して今に至っているということである。

うーん、なるほどなぁ。と少し歴史を知ったことで、僕たちは「スタッド」を使って遊び始めた。

例えば掲示物貼る時は、
「ちょっとスタッド(画鋲)取って?!」
「スタッド(画鋲)足りひんで」
そんな感じで、ちょっと言い回しかっこいいなと思う。

英語の動詞不規則変化では、
「スタッド ストゥッド ストゥッドゥンww」
stud stood stooden

道端に生えている薔薇を見ると、
「スタッド(トゲ)の量やばいな」
「スタッド(トゲ)で防御力高!」
「完全武装やんw」 といった具合になる。

仲が悪い時には、
「ちょっと言葉にスタッド(険)があるで」
と遠回しに忠告。

登山道に落ちている冷蔵庫を見ると、
「これ、部室にほしいな」
「電気どうするん?」
「部室棟の屋根に太陽光パネル設置しようぜ」
「ラグビー部のボールが飛んでくるやん」
「じゃあパネルの表面にスタッド敷き詰めたらいいんちゃう?」
「それ名案。ざまあみろ的な。でも発電できひんやん」
「じゃあ真ん中に巨大なスタッド(迎撃ミサイル)設置したら?」
「シューン、ドカーン」
しょーもないけど、その時は爆笑だった。

今日の登山で、一ついらない知識が増えた。このような知識を世間では薀蓄というらしい。

この後も、僕たちはしりとりをしつつ、宝塚まで歩き続けた。あーぁ、あの時のテンションはなんだったんだろう。今に至っては自分のことながら理解できない。

文章:69thはっしー




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